長野電鉄 (2024/02/29)

北陸新幹線長野電鉄を利用して、長野と湯田中に行ったのでその記録を書こうと思います。

長野電鉄

長野電鉄長野線は、長野県長野市にある長野駅 (A) と長野県下高井郡山ノ内町にある湯田中駅 (B) を結ぶ、全長 33.2 km の路線です。長野電鉄第三セクターではない私鉄で、現在は長野線しか残っていませんが、かつては長野線から分岐して屋代線や河東線で鉄道が運行されていました。長野線は全線電化されており、日中は毎時一本程度の特急列車も運行されています。運賃は長野から湯田中まで片道 1,190 円と高めに設定されていますが、特急料金は +100 円なので、特急が乗り得となっています。

出典:国土地理院ウェブサイト

長野までの行き方

当然ですが、長野電鉄に乗るためにはまず長野駅に行く必要があります。長野市は長野県の中でもかなり北部に位置しているため、東京から在来線でアクセスするにはそこそこ時間がかかり、往復だけで一日の大半が終わってしまいます。私は中学時代から 18 きっぷユーザーでしたが、そのアクセスしづらさ故これまでは長野電鉄に乗車したことはありませんでした。

今回は、旅せよ平日!JR東日本たびキュン♥早割パスという JR 東日本の期間限定のお得なきっぷを使いました。この切符は 1 万円で新幹線含む JR 東日本及び第三セクター路線が乗り放題になるので、新幹線で長野方面に行くことに決めました。

乗車記

朝 5 時半に起床し、少し食事をしてから東京駅に向かう。東京駅には 7 時頃に到着。乗車するのは 7 時 20 分発の北陸新幹線かがやき 503 号金沢行。北陸新幹線の始発は 6 時 16 分発のかがやき 501 号であるが、起床に自信がなかったので一本遅らせた。かがやき号は全車指定席なので指定席乗車券を購入する必要があるが、今回のきっぷで 2 回まで無料で発券できる指定席券を利用できた。同日の東北新幹線はやぶさ号指定席は半月程前には既に満席になっていたが、かがやき号は前日でも余裕で 3 人席を独占することができた。

乗車した車両は JR 西日本の W7 系。JR 西日本車両にのみ搭載されている車内チャイム「北陸ロマン」がかなり好きなので、気分が高揚した。座席に着くと、備え付けの JR 東日本車内サービス誌「トランヴェール」と北陸新幹線敦賀開業が特集されている雑誌を読んだ。私が中高時代のトランヴェールは今のものよりも大きく、巻末に JR 東日本の路線図が載ってていたのだが、それがなくなっていたのは残念である。今年 3 月の北陸新幹線延長開業はホットな話題であるが、かがやき号が金沢以遠で各駅停車になるというのには腰を抜かしてしまった。新幹線の最優等種別が県庁所在地駅を容赦なく通過していくのは個人的には好みなのだが、途中から失速してしまうのは悲しい。

JR 西日本の W7 系。上越妙高駅より先は JR 西日本の管轄となる

大宮駅までは最高 130 km/h なので、在来線と同程度の時間を要する。しかし、ここからがかがやき号の真骨頂で、大宮を出ると次の長野まで約 200 km をノンストップで走り抜ける。とりわけ上越新幹線と分岐する高崎駅までは最高 275 km/h で走るので疾走感を感じられる。高崎駅を出た後は最高 260 km/h となり、トンネル区間も多いため速度はやや控えめとなる。実際地図を見ると、この区間で平地を走るのは高崎・軽井沢・佐久平・上田・長野駅近辺のみであることが確認できる。それでも在来線だと半日かかる大宮長野間を 55 分というのは驚異的なスピードである。

8 時 40 分に長野駅に到着。小腹が減っていたため、駅ビルでりんごジュースとおやきを買ってから、まずは善光寺へ赴いた。長野駅を出て程ない所に善光寺通りがあり、沿って歩いていけば善光寺に到達する。善光寺まではなだらかな上り坂になっていて、この通りを歩くだけでも雰囲気を感じることができる。

30 分ほど歩いて善光寺入口に到着。ここに来るのは初めてではないが、以前来たときは 1 時間弱しかなかったため、じっくりと見られるのは今回が初めてである。三堂、資料館、お戒壇巡りがセットになっている参拝券 (1,200 円) を購入し、まずは本堂の中へ入った。

善光寺本堂

本堂は高さ、横幅、奥行きどれを取っても非常に広い印象を受けた。薄暗い堂内に広がる一面の畳に本尊が佇んでいるのが特徴的である。最初にお参りをしてからは、本堂奥でお戒壇巡りをした。お戒壇巡りは、本堂地下を一切の光がない真っ暗闇の中で周回し、本尊の真下にある「開運の錠前」に触れることでご利益を得られるというものである。暗闇の中を進むために、常に右手で壁を触りながら伝っていくのだが、木造の壁は冷え切っており、手を悴ませるか暗闇で迷子になるかの厳しい二択を突き付けられた。前を行っていた数人のグループがはしゃいでいたので特段怖さを感じることはなかったが、やはり出口で光明が差したときの安心感は底知れなかった。出口は入口のすぐ隣で、途中何回か右折して地下をぐるっと一周回るという構造になっていたようだ。非常に興味深い体験となった。

本堂を一通り見終わった後は、すぐ横にある経蔵へと足を運んだ。経蔵は文字通り経典を所蔵している回転式の書庫であり、一周回すことでお経を読誦するのと同じ功徳があるとされている。私も実際に回してみたが、回し始めはかなりの力が必要で経典の重みを体で感じることができた。経蔵を後にすると、今度はタワーらしき建物があったのでそちらへ向かう。

善光寺資料館。遠目では先端部分のみが見えるので、よくわからない

このタワーらしき建物は三重塔のような構造をしている資料館だった。この塔は、戊辰戦争から第二次世界大戦までの間に戦死した英霊を祀る日本忠霊殿であり、そこに資料館が併設されているようだった。地下の資料館では、善光寺本尊の阿弥陀如来が死者を甦らせたなどの伝説が 10 個くらい書かれているコーナーが特に印象に残っている。

最後は、参拝券で登ることのできる山門に登った。城や門に特有の非常に急な階段を上った先には回廊があり、そこから本堂や長野駅方面の善行寺通りを一望することができる。しっかりと時間を使って善光寺を見るのは初めてだったが、アトラクション的な要素も多々あって十分に満喫することができた。

山門から望む善行寺通り

善光寺を出てからは、本題の長野電鉄に乗るために最寄り駅の善光寺下駅まで、列車の出発が間近だったので駆け足で急いだ。長野電鉄湯田中まで往復するなら 1 日フリーきっぷの方が安いという断片的な記憶があったので、値段を確認せずに窓口でフリーきっぷを申し込む。フリーきっぷは 2,070 円で、単純な往復よりも 310 円安くさらに特急も乗り放題になるので実際にお得になっていた。スタンプの押印に少し時間がかかっていたようで、ホームに着く頃には既に列車が入線していた。列車は引退した東急の 8500 系で、私が幼い頃に地元を走っていた電車との邂逅に思わず笑みがこぼれた。

かつて東急の主力車両だった 8500 系

11 時 20 分に善光寺駅を出発。直射日光と暖房で暑いくらいの車内で一面に広がる雪景色を眺めながら列車は 11 時 41 分に終点の須坂駅に到着する。親戚が富士通須坂工場 に勤務していたことがある影響で何度か話に聞いたことのある地だが、実際に来るのは初めてだ。須坂には長野電鉄の車庫があり、東京メトロ (営団地下鉄) 日比谷線の 03 系や、小田急ロマンスカーの 10000 形 HiSE といった、かつて首都圏を走っていたレジェンドが勢揃いしていて、しばし懐古に浸った。

ここから湯田中駅までは、ロマンスカーを利用する。11 時 50 分に須坂駅を発った 4 両編成の特急ゆけむり号は最初はほぼ満席だった。途中の小布施駅信州中野駅でもある程度乗客を降ろした後、12 時 18 分に終点湯田中駅に到着。

小田急 10000 形。ロマンスカー

湯田中で何をするかは特に考えていなかったが、猿が有名であることは知っていたので、ひとまず地獄谷野猿公苑に行くことにした。湯田中駅前からバスに 10 分程乗車し、スノーモンキーパーク停留所まで移動する。ここから野猿公苑まではまだ 2 km 程あるのだが、山道になっている関係でバスはここまでしか来れないようだ。

時刻は 13 時前になっていたので、まずはバス停近くのそば処で食事をすることにした。私はそばとうどんでは断然うどん派なのだが、せっかく長野に来たので十割蕎麦を注文。濃厚な蕎麦もさることながら、山菜の天ぷらや山葵も新鮮でとても美味しかった。観光地価格ではあったが、〆の蕎麦湯もあって満足の食事だった。

長野の十割蕎麦。蕎麦湯もついているのが嬉しい

食後は直接野猿公苑へと向かった。ここからは舗装されていない山道で、転落が死を意味するような厳しさがある。木の枝に積もった雪が突然降ってきたり、斜面の雪が崩れてきたりすることもしばしばあり、スリルがあって非常に面白い。

雪化粧した山道を行く

多数の観光客とすれ違ったりしながら 30 分程山道を歩くと地獄谷野猿公苑に到着する。入苑料は 800 円。苑内は主に外国人観光客で溢れかえっており、驚きを隠せなかった。ニホンザルは外国人にウケのいいのだろうか。

onsen for human

苑に入る際に猿に近づかないように注意を勧告されたが、こちらから近づこうとしなくても足元には猿がいるというような状況になっていた。寒さゆえ 2,3 匹の猿が身を寄せ合って毛づくろいをしているのが可愛らしかった。最深部まで行くと、猿が入る温泉がある。ライブ中継カメラもあり、どうやらここが一番の見どころとなっているようだ。私がいたときには実際に温泉に浸かっている猿を見ることはできなかったが、脇で温かそうにしているのを見て少し羨ましくなってしまった。

onsen for monkey

公苑内には人間用の温泉もあったが、そこはかなり古いうえに完全に観光地価格だったので、一旦バス停の方まで引き返すことにした。山を下った後は次のバスが一時間半後だったので、ひとまず湯田中駅に向かって足を進める。歩いている途中で日帰り入浴可能な温泉施設「みやま温泉わくわくの湯」があったので、衝動的に立ち寄った。料金は 500 円で受付は常駐しておらず、硬貨を投入するとゲートが通れるようになるというシステムになっていた。浴場への入口を開けるとまず体の洗い場があり、そのさらに先の入口を開けると露天風呂がある。先客はいなかったので、5 m 四方以上もの広々とした露天風呂を占有できた。屋根に積もった雪がぱらぱらと降ってくるのも風情があり、気分が良かったので随分と長居をしてしまった。

30 分程して上がると、またもや外国人観光客が続々と訪れていた。人が少ない時間帯に来ることができたのは幸運だったようだ。脱衣所には鍵付きのロッカーと無料のドライヤーもあり、500 円とは思えない程の質の高い温泉施設だった。湯上り処で朝に買ったりんごジュースを飲むと、バスの発車時刻まで約 20 分となっていたので、結局最寄りのバス停まで引き返してバスで湯田中駅に帰ることにした。

17 時 10 分頃に湯田中駅に到着。出発間近の 17 時 15 分発普通信州中野行に乗車する。車両は東京メトロ日比谷線の 03 系で、東横線と直通運転していた時代にはよく乗った思い出がある。疲れが溜まっていたのですぐ寝てしまい、気づいたときには終点の信州中野駅に到着していた。

営団地下鉄 03 系。顔は丸ノ内線 02 系っぽい

信州中野駅には 17 時 35 分に到着し、17 時 48 分の当駅始発普通長野行に乗り継ぐ。将棋の A 級順位戦最終局を見たりしながらぼーっとしてたらいつの間にか終点の長野駅に到着。時刻は 18 時 37 分で、ホームは帰宅するサラリーマンでごった返していた。

元々の想定では長野からさらに新潟方面へ北を目指そうと考えていたが、善光寺参りや地獄谷野猿公苑で思いの外時間がかかったことですっかり夜になってしまったため、少々もったいないが大人しく東京に帰ることにした。帰りの新幹線の候補は 19:05 かがやき号、19:41 はくたか号、20:29 かがやき号の 3 択。全車指定のかがやき号は少々空きがあり、はくたか号の指定席は 3 人座席の真ん中以外空いていないという状況だった。

いい感じの指定席がなかったのでとりあえず食事をすることにした。昼にそばを食べたので特に行きたいところはなかったので、善光寺通り近くのラーメン屋に入店。海なし県の海鮮出汁ラーメンに興味を駆られたので注文する。こちらは今まで食べたことがないくらいの濃厚なスープだった。

魚介ラーメン@麺匠佐蔵

提供が早かったため 19 時 20 分頃には店を出ることができたので、41 分発のはくたか号乗車を目指す。指定席はほとんど埋まっていたので、全体の 1/3 を占める自由席に賭けることにした。はくたか号利用者は長野以南が多そうというのと、最悪立ちになってもいいという見立てである。19 時 41 分発はくたか 574 号東京行に乗車。先頭 1 号車の乗車率は 3 割程度で難なく着席できた。かがやき号が通過する上田、佐久平、軽井沢、高崎に停車するので往路と比べてややテンポが落ちている印象を受けたが、当然ながらそれでも速いことに変わりはない。ここでも A 級順位戦中継を見たりしながら東京まで帰った。東京駅には 21 時 16 分に到着。もう少し新幹線乗り放題を活かしたかったという気持ちもあったが、結果的には過不足のない適度な旅行になったと思う。

感想

新幹線乗り放題系の企画でどこにいくかは難しい...